独自の市場調査を進める中で、15kmという遠方に位置するレンタルガレージ(シャッター付きガレージ)同士が、顧客を奪い合うケースを確認しました。
一般的な店舗ビジネスにおいて、15kmは商圏の枠を大きく超えた無関係ともいえる距離です。
しかしレンタルガレージ市場においては、離れた物件を直近の競合として警戒する必要があります。
本コラムでは、そのメカニズムを詳しく解説します。
最近の市場調査において、特定のエリアに隣接する3つのレンタルガレージが、いずれも満車に至らず空室を抱えている実態を確認しました。
対象となる人口密集地には、本来十分なガレージ需要が見込まれるはずです。
それにもかかわらず、なぜ集客が停滞しているのか。
その背景には、単なる立地条件の良し悪しでは測れない、ドーナツ構造が影響していると推測されます。
これまでの市場調査から、人口密集地がコンパクトかつ独立しているエリアでは、特有のドーナツ構造が発生しやすいことが判明しています。
本来、駐車場不足が深刻な人口密集地はレンタルガレージの絶好のターゲットです。
しかし、こうしたエリアは地価が高騰しており、投資効率(利回り)の観点から敬遠されがちです。
その結果、人口密集地を取り囲むように、少し離れた地価の安い郊外に複数のレンタルガレージが乱立する現象が起こります。
これが「ドーナツ構造」です。
この構造の最大の懸念点は、本来は競合しないはずのガレージ同士が、一人の顧客を奪い合う点にあります。
選択肢のフラット化
中心部に住むユーザーから見れば、東西南北どの方向のガレージも「自宅から車で15〜20分」という同条件の選択肢になります。
広域競合の発生
通常、レンタルガレージの商圏は半径数km程度ですが、ドーナツ構造下では利便性で差がつかず、結果として価格競争や設備の豪華さといった消耗戦に陥りやすくなります。
「郊外だから安く建てられる」という戦略は、実は最も競合の激しいレッドオーシャンへ飛び込むリスクを抱えています。
このドーナツ構造エリアにおいて空室をさらに悪化させているのが、1棟あたりの区画数の多さです。
実際に、ドーナツ構造化しているエリアと、人口密集地が点在しガレージが適度に分散しているエリアを比較すると、1棟あたりの規模に明らかな差が見られました。
- ドーナツ構造エリア:平均 7.1区画
- 密集地点在エリア:平均 4.5区画
原因は、郊外特有の「土地値の安さ」にあります。
土地が安く手に入るため、投資効率を上げようと1敷地あたりの区画数を増やし、10区画を超える比較的大きなガレージを建設する傾向が強まります。
しかし、人口密集地の周辺にこうした大型物件が乱立すれば、供給過剰に拍車がかかります。
ドーナツ構造エリアにおいて、ユーザーがガレージを選ぶ基準は賃料や設備だけではありません。
実は、「目的地(自宅や主要駅)からの移動時間のロス」が重要な比較材料となります。
ユーザーにとって「通いやすい」と感じさせるガレージには、共通のパターンがあります。
目的地への道中にあるか
自宅からレジャー先、あるいは主要な活動エリアへ向かう動線上に位置していること。
幹線道路沿いのアクセスの良さ
人口密集地から郊外へ抜ける主要な幹線道路に面している、またはスムーズに合流できる立地であること。
付加価値の高い設備
多少の距離を差し引いても「ここがいい」と思わせる、セキュリティやメンテナンス環境の充実。
- 目的地の道中にある
- 人口密集地から郊外に向ける幹線道路沿い
- 付加価値の高い設備
たとえ物理的な距離が近くても、「常に渋滞している道を通る必要がある」「入り組んだ細い道で遠回りしなければならない」といった立地は、ユーザーに敬遠される傾向にあります。
出発する際や帰着の際にアクセスの悪さでストレスを感じるガレージは、15km離れている競合に顧客を奪われる可能性があります。
レンタルガレージ投資において、「人口が多いから」「地価が安いから」といった漠然とした需要予測だけで参入するのは極めて危険です。
今回解説したドーナツ構造のように、一見ポテンシャルの高いエリアであっても、供給過剰やアクセスの質によって空室が続くリスクが潜んでいます。
レンタルガレージ専門メディア「ガレマニ」では、全国1,200拠点を超えるガレージの立地、賃料、区画数を網羅。現場のリアルな数字を元にした「市場調査レポート」を提供しています。